不器用男子に溺愛されて
理久くんが浮気をしているのかしていないのか。それは、分からない。だけど、家にあげるくらいの関係であることは間違いない。
二人は、これから元サヤに戻るのだろうか。いや、ひょっとしたら既に戻っているのかもしれない。
だとしたら、私は? 理久くんにとって私なんて、もうどうでもよくなってしまうのかな。
そんな事を考えては、悲しい気持ちになり、泣いて、泣いて、泣いて。私は、そんな風にして咲ちゃんや森田さんと別れたあとの夜を負の無限ループの中で過ごした。
明日、どうやって理久くんと目を合わせればいいんだろう。どうやって理久くんに〝おはよう〟と言えばいいのだろうか。
私は、理久くんに会った時〝おはよう〟と上手く言えるだろうか。上手く笑えるだろうか。
そんな事を考え続けているうちに朝を迎えてしまった私は、まだ少し腫れている目を冷やし、準備を整えるといつもより遅めに家を出た。
「みや子」
「あっ、咲ちゃん」
会社に着く手前で後ろから声がかかった。私に声をかけてくれたのは咲ちゃんで、咲ちゃんは私の顔を見るなり「泣いた?」と心配そうに言った。
「ううん。ちょっとうつ伏せで寝ちゃったから腫れただけだよ」
きっと、咲ちゃんにはお見通しなんだろうけれど、私はそう言って笑って見せた。すると、咲ちゃんは「バカね」と言って複雑に笑う。