不器用男子に溺愛されて
「森田さん、積極的だね」
「うん。そうだね。バカみたい」
いつも、森田さんに何でも構わず言っている咲ちゃん。そんな咲ちゃんが普段見せていないような表情を何度も浮かべた。私は、その事がなんだか嬉しくて、私の口角も自然と上がっていった。
そんな風に恋愛の話から他愛もない話まで。たくさん話をしながらランニングをし続けること約30分。その時点で既に汗だくになっていた私達は、その後、ボルダリングを体験し、へとへとになって自宅へと戻った。
────そして、翌日。
「みや子、おはよ」
「あ。咲ちゃん、おはよう」
早速、昨日購入したパンプスを履いて出勤した私は、慣れないヒールのせいでおぼつかない足取りでオフィスに入る。すると、咲ちゃんがちょうどオフィスを出ようとしていたらしく、ドアの向こう側で驚いた表情を浮かべていた。
「あ、ちょっとー。昨日のリップつけてないでしょ?」
驚いた表情から一変して、少しだけ怒ったふりをする咲ちゃん。彼女の一言に少しギクリとした私は「えへへ」と誤魔化すように笑ってみせた。
「こら。えへへ、じゃないでしょ」
「だ、だって……このパンプスもそうだけど……なんか、緊張して」