最後の100日~君に幸あれ~


幸せな日々は長くは続かなかった。

いつものようにリビングの僕専用のベッドで寝ているとバンッという音に目を開けた。

目の前には美奈の父親と母親が言い争う姿が見える。

僕は慌てて美奈の部屋の前に立った。

すぐに父親は美奈の部屋の前に来た。

出会った頃の優しい彼はもうどこにもいなかった。


「どけっ!」

そう言い彼は僕のことを蹴り飛ばした。

美奈が危ないっ!

僕は急いで美奈の元へ向かった。

体が痛い。でもそんなことどうでもいい。

「子供は関係ないじゃない!!」

「うるせぇ!」

そう言いながら彼は美奈に暴力を振るった。

僕が人間だったら…もっと体が大きかったら。

美奈のことを助けられるのに。


彼はすぐに家を出て行ってしまった。


僕の目の前には、力なく横たわる二人。

僕は近寄り美奈の手のひらについた傷をそっと舐めた。

美奈…ごめんね。

僕が弱いから守れないんだ。

「ルウ…」

「ニャァ…」

ごめんなさい。美奈。

僕は美奈の体に少し寄った。

「大丈夫…私は大丈夫…だよ…」

美奈の手が僕の頭に触れる。

美奈はいつも他人を優先していた。

今だって僕に心配させないよう無理やり笑ってる。



その後はあっという間だった。


美奈とお母さんは大きな荷物を持って出て行ってしまった。

美奈の『迎えに来るから』と言う言葉を信じ僕は美奈を探した。

『美奈!美奈!どこに居るの!?』


家中探している。

いつ僕を迎えに来てくれるの?

もしかして、僕のことを捨てたの?

美奈はそんなことしない…よね。


『美奈!美奈!!』


声が枯れても僕は美奈を探した。

何日もご飯を食べていない。

彼は帰ってこない。

美奈…寂しいよ…。

「ちっ…」

彼が帰って来た。

僕にはもう立っている力がない。

でも、美奈の名前を何度も叫んだ。

彼は僕に気づき蹴られた。

何度も、何度も、何度も…。


僕の口から赤い液体が出た。

それでも僕は美奈の名前を呼んだ。

『み…な…っ!美奈…っ!』


なんで?出会った頃の優しい彼はどこに行ってしまったんだ?

彼は何処かへ行ってしまった。

彼の手は暖かくて優しくて僕が大好きだった彼はどこに行ってしまった?



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