王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
もともと貴族である美男子のライアンの装いは様になっていたが、無骨な海の男たちには慣れぬ格好は多少無理があったようだ。
仮面と共に、窮屈なコートやクラヴァットも脱ぎ捨てた。
アルベルトの顔色が変わる。
「ほう。土産とは、この物騒な輩のことですかな」
「もちろん、それだけではありませんよ。あなたがその物騒な輩たちを皇城へ引き入れ、取引をしていた証拠もここに。入手経路は様々ですがすべて揃っています。あなたがサインをした麻薬密輸の証明書もね」
再び会場にざわめきが起こった。
皇帝が海賊を相手に麻薬と武器の取引をしていることは、城の中の一部の者しか知らないのだ。
普段各自の領地にいる貴族たちには、知る由も無いことだった。
戦士の誇りで繋がれた帝国の貴族たちに少しずつ皇帝への不信感が広がっていく。
一瞬目を細めて表情を消したアルベルトだったが、すぐに余裕のある笑みを戻した。
「それがどうしたと言うのかね。ここは私の帝国だ。私が誰となんの取引をしようと、私の勝手。私が一番の強者だ。なにか問題があったかね?」
皇帝が騒がしい周りの貴族に呼びかけると、辺りはしんと静まった。
エドワードは黙っている。
すると彼らの背後から、さらにふたりの男が進み出てきた。
「問題なら、ここにひとつございますよ」
仮面舞踏会に集まった者の視線が一点に集中する。
赤みがかったブラウンの髪の男は、この帝国の誰もが目にしたことのある者だ。
しかし彼は、あのような男であっただろうか。
陸軍兵士の軍服に身を包み、肩にかけた大授で軍務長官の勲章を佩用した彼の立ち居振る舞いや声の響きは、もっと頼りないものだったはずである。