王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです

バルバーニ帝国第二皇子のヴィルマー・ファルケンベルグは、ナバの間諜であるロロを伴って王太子の隣に立った。

アルベルトが眉間に一本皺を刻む。


「ヴィルマー、お前そちらでなにをしている。父親の私に楯突くつもりか? 気でも違ったのではないだろうな」


幼い頃から高圧的だった父の威嚇を、息子は鼻で笑い飛ばした。

そのままおかしくてたまらないというように肩を揺らす。


「今の私が気を違えているというのなら、それはもう25年も続いていることになる。あなたも兄上も、なにもご存知でなかっただけのことですよ」


ヴィルマーという男はある意味ラナと似ていて、彼もまた仮面を被るのが上手い男であった。

しかしそれはラナとは逆に、彼の家族を欺くためのものだ。

彼が片手を振ると、ホールの外の警備についていた兵士たちが中央に集まってきて、エドワードたちを囲っていた兵士を半円に押しやった。

彼らは長い間ひっそりと第二皇子を支持してきた戦士たちである。


「お忘れですか? 父上が私の部下たちに強いてきたことを、私はすべて記録しているのですよ。もちろんあなたの指示で。何度かは虚偽の報告書を作り、こうして私についてきてくれる部下を守りはしましたがね」


ヴィルマーが手にした書類を天高く掲げる。


「あなたは誇り高きバルバーニの戦士たちに麻薬を使わせ、戦地へ送っている。長年繰り返してきた、兵士の身体や山の動物たちを使った研究の報告書のすべてもここにある!」


芯の通った強い声で叫んだヴィルマーが、手にした紙を後ろにいる貴族たちに向かってばら撒いた。

彼の部下たちが残りの書類とその写しをホールの至る所で撒き、それを拾った者は次々と血相を変えて叫び始めた。
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