王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
エドワードとハサンが騎士団の仲間と共に勝手に模擬戦を企てて上官に怒られた話や、ハサンとライアンがいかに不仲であったかという話は、ラナをいつものように無邪気に笑わせた。
しかし話がカルダ山の戦いのことへ移ると、エドワードの軽快な口調も重くなり、ラナは無意識に彼の右手を優しく握っていた。
「……それで、あいつは俺の腕の中で死んだ。王立騎士団の教えの通り、主君のために命を賭して。俺はあのとき初めて、自分が王子であることを呪った」
王位継承者である自分を守るために友人さえ命を落とすということを目の当たりにし、彼はその日からハサンへの罪悪感に囚われているのだ。
もしもエドワードがただ普通の友であったなら、ハサンは命を張らずに済んだのではないかと。
それを聞いていたラナははたと首を傾げた。
(私は、エドワード様に向けられた剣の前に飛び出したとき、王子を守らなくてはいけないなどと思ったかしら)
ラナはそうではないと思う。
そんなことを考えていたら、きっと恐怖が勝って咄嗟に動けなかっただろう。
ただあの刃が彼を傷つけることが許せなかったから、ラナは激しい怒りに突き動かされて飛び出したのだ。
大切なものを壊されることへの憤怒が、彼女に死の恐怖すら忘れさせた。
「殿下」
ラナは隣に寝転ぶ婚約者にそっと囁きかける。
首を捻ってこちらを向いたエドワードの眉間には、深い皺が刻まれていた。
ラナはしっかりと自分の想いが届くように祈りを込めて、エドワードの肩に額を擦りつける。
「ハサン様も私も、たぶんライアンも……あなたが王太子だから助けるのではありません。エドワード様のことが大切だから、守りたいと思うのです。ナバの騎士とは、そういう方々ではありませんか」