クールな公爵様のゆゆしき恋情
「アレクセイ様の事はもう忘れたいと思っていました。忘れる様にと心がけて毎日を過ごしていました。実際この半年で思い出す事が無くなって来ていたのです」

穏やかに暮らせていました。湖のお屋敷での暮らしは、小さな幸せでいっぱいで満たされた気持ちでいました。
だから私にはアレクセイ様の事を過去の事に出来たのだと思っていたのです。

「王都に留まっていた頃はよくアレクセイ様の夢を見ました。最近は見なくなりました。王都での様子も気にならなくなりました。アレクセイ様が他の誰と結婚なさっても心乱されないと思っていました」

二人の間の距離がどれほど開いてしまったのか。淡々と言葉を並べる私からアレクセイ様は目を逸らしました。その顔色は悪く、私は胸が痛くなるのを感じながら続けました。

「でも……フェルザー公爵になったアレクセイ様と再会して、忘れてなんていなかった事を実感しました」

アレクセイ様がビクリと肩を震わせ、ゆっくりと顔を上げ、視線が重なりあいました。

「アレクセイ様の事を完全に信じる事は出来ません。でも私はアレクセイ様を拒否する事も出来ません。……幼い頃から王都に行くまで、私はアレクセイの事だけを想っていました。何の不安もなく……幸せだったあの頃の想いが何時までも残っているのです」

「……ラウラ」

アレクセイ様は恐る恐るといった様子で私の背中に腕を回し、抱き寄せてます。

「俺も何度も思っていた。あの幸せで優しい時間が流れていた頃の二人に戻りたいと」

アレクセイ様の声が震えている様な気がしました。ですがお顔を見る事は叶いませんでした。私はアレクセイ様に強く抱き寄せられ、身動きが出来なかったのです。

私達はあの頃の様に、幸せな二人に戻れるのしょうか。

悩み迷いながら、私はアレクセイ様の背中に腕を回しました。


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