クールな公爵様のゆゆしき恋情
「負けって何の事ですか?」

私の言葉に、エステルが少し気まずい顔になりました。

「ラウラがアレクお兄様との婚約を受け入れるかどうかをレオンと話していたの。私は難しいと言ったのよ。ラウラの様子からお兄様と会うのも拒否しそうだと思ったから、でもレオンは絶対に上手くいくって……」

「だから言っただろ? ラウラは昔から”アレク様大好き!”とか恥ずかし気もなく豪語するくらいアレク一筋だったんだからな。俺は自信が有ったぜ!」

お兄様は得意気に語ります。

アレクセイ様が何か言うかと思いチラリと隣を見遣りましたが、アレクセイ様は口元を手で押さえ俯いていて、お兄様に何か言う気配は有りません。

ならば私が遠慮無く言わせて貰います!

「お兄様! そもそもこうなったのはお兄様がフェルザー公爵の正体を私に秘密にしていたからです。知っていたらエステルの言う通り会ったりはしませんでした」

「だって知らない方が感動の再会になるだろ?」

「感動って……驚く私の姿を想像してお兄様が楽しみたいだけですよね!」

過去の数々の悪戯から、容易に予想が出来ます。

「そんな怒るなよ。驚かせて悪かったよ。今度美味い魚料理を奢ってやるから」

私の剣幕に焦ったのか、お兄様は今度は懐柔作戦に出てきたようです。

「美味しいお魚はもう頂きましたから結構です」

怒りが覚めないまま言う私の言葉に、お兄様は意外そうな顔をしてアレクセイ様を見ました。

「え? もう連れて行ったのか? 馬を飛ばして来たって行っても、せいぜい三日程度だろ? やる事早くないか?」

お兄様は何を言っているのでしょうか?
話の内容が全く分からず首を傾げていると、アレクセイ様が言いました。

「エステル、しばらくレオンを黙らせろ」

先程は無反応だったアレクセイ様が、今度はいち早く反応して、威圧感たっぷりにエステルに命令しました。
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