クールな公爵様のゆゆしき恋情
「そ、そんなにしっかり見ていたのですか?」

今夜の主役なのに何をしているのでしょうか?

「そりゃあ見るわよ。私だけでなく、レオンもお義父様もお義母様もしっかり見てたわよ。お義母様はかなりご機嫌だったわ。直ぐに結婚の準備をってお義父様に迫っていたくらいよ」

「……嘘ですよね?」

「本当よ。あっ、ついでに知らせておくと、広間に居た殆どの人達に見られていたと思うわよ。お兄様もラウラも目立つから当然ね。とにかく明日にはフェルザー公爵閣下はアンテス辺境伯令嬢を溺愛しているって噂が広がると思うわ」

「や、やめて下さい」

私は項垂れ恥ずかしい噂が流れる不安に怯えました。
どうして私はあんなに浮かれて三曲も続けて踊ってしまったのでしょうか。
夜会のお祝いムードとアレクセイ様の醸し出す甘い空気に呑まれてしまったとは言え、なんて恥ずかしい。

「そんなに落ち込まなくていいじゃない。アレクお兄様と結婚する事にしたんでしょう?」

エステルはクスクス笑い、妙に楽しそうです。絶対にこの状況を楽しんでいます。

「まだ結婚が決まった訳じゃありませんからか」

少し不貞腐れて答えると、エステルは何でもない様にサラリと言いました。

「決まったも同然でしょう? どう見ても両思いなんだから」

「えっ? 何言ってるんですか? 私は別に……」

「自分で気付いてないの? ラウラがアレクお兄様を見る目は完全に恋する目よ」

「……」

「皆遠慮して言わないと思うから私がはっきり言うわ。見ているこっちが恥ずかしい位二人の間の空気は甘いわよ」

とどめを刺され、私は立ち直れない程落ち込みました。

皆、そう感じていたのでしょうか? そう言えば、アンネの私達を見る目は半分呆れている感じだった様な気がします。
< 127 / 196 >

この作品をシェア

pagetop