クールな公爵様のゆゆしき恋情
「エステル、私はもう皆の顔が見れません」

「そんなに気にしなくていいじゃない。悪い事をしてる訳じゃないんだから。私とレオンなんて、もっと恥ずかしい事してるわよ」

それは知っていますが、私は二人の様な我が道を行く強い精神力は持ち合わせていません。

「エステル達は規格外です、参考になりません。それに私は一度婚約解消してアンテスに戻って来てしまっています。周りの目を気にするなと言う方が無理です」

エステルは、「失礼ね」と頬を膨らました後、そう言えばと思い出した様に言いました。

「アレクお兄様とラウラの婚約解消の話、王都で話題にはなっていなかったわ」

「そうなのですか? ……エステルの結婚が有ったからでしょうか?」

「どうかしら。貴族達の間では私の結婚よりアレクお兄様の結婚の方が重要事項のはずだからなんとも言えないけど」

エステルが首を傾げます。

「よく分かりませんね」

「そうね、気になるならアレクお兄様に直接聞いてみるといいわ」

「直接、ですか……なんとなく聞き辛いですね」

「どうして? ラウラの質問なら何でも答えてくれそうじゃない。アレクお兄様はどう見てもラウラに夢中よ。ラウラはブロスト家のデリアの事が気になってるのかもしれないけれど、あれは勘違いよ」

「勘違いでは有りませんよ。だってアレクセイ様本人が言った事ですよ」

ショックだっただけに、今でも鮮明に覚えています。

「でも、デリアは結婚が決まったそうよ。アレクお兄様と何か有ったら他の人と結婚なんてしないでしょう?」
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