クールな公爵様のゆゆしき恋情
「その情けで俺は更に屈辱を感じた。あいつにだけは負けたく無いと思っているのに、相手にされていないんだからな。王都に戻ってからもラウラとリュシオンの事が気がかりで仕方なかった。ラウラから何度も手紙を貰ったが、それにはいつもリュシオンの事が書かれていた。ラウラからの手紙を楽しみにしていたのに、いつの頃からか苦痛にもなっていた」

「そんな……」

私はアレクセイ様を想って、心を込めて手紙を書いていたつもりです。それがアレクセイ様を苦しめていただなんて、思いもしませんでした。

「そんな顔をするな。ラウラが悪い訳じゃない。俺自身の問題だからな……王都での俺はそれまで以上に剣の腕を磨き、座学にも励んだ。リュシオンよりも優れた男になりたい一心で必死だった。でもその間にもあいつの名声は高まるばかりで、焦る気持ちは膨らんでいくばかりだった。そんな日々を過ごしている内に、ラウラが王都へやって来たんだ」

「ベルハイム城での再会の時、アレクセイ様が私を拒否したのはそのせいなんですか?」

今朝夢で見たせいもあるのでしょう。その時の光景が鮮やかに蘇ります。私が触れる事をアレクセイ様は避けました。

「あれは……拒否したつもりじゃ無かった。ただ一年ぶりに会ったラウラはますます女らしくなっていて、動揺したんだ。それなのにラウラは子供の頃の様に抱き付いて来ようとしただろう? そんな事をされたら辺境伯殿の前なのに取り乱してしまいそうだった。それで思わず拒否する様な事を言ってしまったんだ」

「では……私を嫌っていた訳では無いのですか?」

アレクセイ様は、迷いなく頷いて言いました。

「その反対だ。ラウラが好き過ぎてどうすればいいのか分からなかった」
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