クールな公爵様のゆゆしき恋情
あの頃のアレクセイ様はまだ私に優しく、笑顔を見せてくれていました。

変わってしまったのは私が社交界デビューの支度の為に王都へ出向いた15歳の時。
お父様と共に挨拶に伺ったその場で、アレクセイ様は私を拒絶したのです。

いえ、当時の私は気づきませんでしたが、変化はそれより前から起きていたのです。

アレクセイ様がアンテスから王都へ戻った後、幼い頃から続けていた手紙のやり取りが、だんだんと減っていったのですから。
アレクセイ様はアンテスでの再会の時に私を嫌いになったのでしょう。

理由は今でも分かりませんが、私にとって恋の思い出に溢れたあの初夏の幸せな日々は、アレクセイ様にとって良くない記憶の日々なのでしょう。



アレクセイ様と別れてこんなに遠く離れても、時々悲しくてどうしようもない気持ちに襲われます。

この痛みはいつか消えるのでしょうか。
幸せだった時を思い出しても悲しくならない様に、いつかはなれるのでしょうか。

新しい住まいで迎える初めての朝、まだ殺風景な中庭を見下ろしながら、私はそんな事を考えていたのです。
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