クールな公爵様のゆゆしき恋情
アレクセイ様の前では決して感情を乱さないと決めていました。
アレクセイ様の一挙一動で傷付いたり、喜んだりする事はもう起こり得ないはずだったのです。

それなのに、今私は感情を大きく揺さぶられ、涙を堪える事が出来ませんでした。

ポロポロと頬を伝い零れていく事が分かっているのに、止められないのです。

傷付く事を言われた訳でも、嫌な事をされた訳でも有りません。アレクセイ様はただ謝ってくれているだけなのです。

ですが、自分でもどうしてかは分かりませんが、私は今までで一番悲しくて心が痛くて仕方がないのです。


「ラウラ……」

アレクセイ様の動揺が伝わって来ます。
躊躇いがちに延ばしたその手が私に触れそうになった時、私は頭で考えるより先に叫んでいました。

「触らないで!」

アレクセイ様の手がビクリと震えて宙で止まります。

「お願いです……もう謝らないで下さい……私に触れないで下さい。どうか放っておいてください」

無礼な事を言っている自覚は有りました。
ですが私はどうしようも無い程、感情を抑える事が出来なくなっていたのです。
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