エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜
***


「君は優秀な〈グリーン〉だ。君の呼びかけになら、きっとあの子も応えてくれる……」

窓の外を流れる緑の間に、大きなお屋敷が現れては消えていく。

郊外の高級住宅街。

カンバラ邸に着くのももうすぐらしい。

けれどそれにも気づかない様子で、ハルヒコ様は私の手を握ったまま、思いつめたように呟いた。


彼の言う「あの子」というのは、彼の娘であるマジュ・カンバラのことだ。

マジュが転落事故に合ったのは二年前のこと。

打ちどころが悪かったのが原因で、今日に至るまでずっと意識が戻らずに眠り続けているらしい。

二年間、医者も家族も手をつくしたけれど、彼女が目覚めることはなかった。
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