エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜
手元に置いた〈グリーン〉に対して、主人が求めてくるのは「能力」ではなく「性」だというわけだ。

私だって、覚悟はしていた。

花街育ちで現実を知っている分、『園』の他の少女たちよりもずっとしっかり心の準備をしていたはずだった。

いつか私も、脂ののった老人の愛人になる。

でも、私をちゃんと囲って不自由のない暮らしをさせてくれるなら、主人がどんな人になろうとかまわない、と。


けれど、実際に私の主人になったハルヒコ様は、笑顔の甘やかな30代。

若くても社長だし、暮らしの心配はなにもない。


それに―――彼が私に求めたものは、愛人関係なんかじゃなかった。

ハルヒコ様が私に求めたのは、〈グリーン〉としての本来の力。

この治癒能力で、ひとりの少女を救うことだった。


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