エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜
改まったように私に向き直って告げるハルヒコ様。
私は何も反応できずに、彼を見返した。
「……リイナ?」
訝しんだ彼がもう一度私の名を呼ぶ。
私は微笑んだ。
非常電源のおかげでかろうじて動く機械みたいに。
「はい、もちろんです。
でも、少し待っていただいてもよろしいですか?さっきまで屋根裏で本を読んでいたんですが、すぐに戻るつもりでいたので、窓を開けたままで……」
「ああ、そうか。わかった、行っておいで。私の部屋で待っているから」
ハルヒコ様が頷き、私は「失礼します」とお辞儀する。
彼に背を向けて、歩き出す。
窓なんか開けていないけれど、屋根裏へと向かう。
背中にずっと視線を感じたけれど、振り返らなかった。
私は無価値になったんだ。
ううん、元から価値なんかなかったのに、あるように勘違いしてこんな所まで歩いてきてしまっただけ。
辿ってきた道が勘違いだったのに、進む道なんかあるわけなかったんだ。
馬鹿な娘。
凪いだ心は、案外あっさりと自分の愚かさも夢の終わりも受け入れていた。
だけどひとつだけ、私はこれだけはきっと耐えられない。
ハルヒコ様の口から、直接「終わり」を言い渡されることだけは。

