エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜
私は反射的に、荷物の散らばった自分の足元に目を向けた。
財布にタブレット端末、書類の束をはさんだファイル。
ファイルからはみ出した紙に記された、『調書』の文字。
そこにクリップでとめられた、一枚の写真。
写っているのは、赤い髪の女性だった。
いつ撮られたものだろう。
こちらに向けた虚ろな表情の中に、暗い炎のように緑の瞳が燃えているーーー。
(ねえさん……ーーー)
逸らされたハルヒコ様の目と、写真の中から睨みつけてくるねえさんの目。
これが、私に突きつけられた、現実。
ハルヒコ様はあわててそれを拾い、彼らしくない焦った手つきで他の荷物と一緒にバッグに押し込む。
カチン、と留め金の閉まる音。
それは拒絶の音として私の中に響いた。
拒絶され、目の前の扉を閉ざされる音。
扉の向こうに光は消え、世界は闇に包まれる。
何も見えない、何もない、これでもうーーーおしまい。
「リイナ」
ハルヒコ様が私を呼ぶ声が、ひどく遠い。
「リイナ、実はきみに話しておきたいことがある。このあと少し時間をもらえないかい?」