溺愛〜ラビリンス〜

固まって柚ちゃんを見ている俺に翔真が


「柚はあげないよ。」


と言った。

翔真に視線を向けると強い瞳で俺を見据え、どれだけ大事なのかわかった。あぁ絶対に敵わないと感じた。


「わかった。」


俺は小さく呟いた。

その時からずっと翔真の中で一番は柚ちゃん。柚ちゃんの為に翔真があると言ってもいいのかもしれない。そんな二人を俺は傍でずっと見てきた。



中学で入った暴走族ブラックホークスは、高校に上がり二年生で翔真が総長、俺が副総長になった。
総長になって間もなく、翔真が柚ちゃんを姫にすると宣言した。
健人、爽、凌の三人は驚いた様子でまだ中学生の妹だから反対の様だった。

でも翔真は姫にすると宣言したのであって反対を受け付ける気はない。俺は翔真の想いを昔から見てきたから翔真の気持ちを理解していた。三人には詳しい事は言わなかったが、翔真がこの件を譲る気はない事を話しておいた。

三人も俺から聞いていたから翔真に楯突く気はないらしく、驚きはしたものの何も言わなかった。



そして柚ちゃんは姫になる事が決まり、初めて倉庫に来る日がきた。





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