溺愛〜ラビリンス〜
ドアが開く音がしたかと思うと、柚が呼んだ看護士が近づいて来て声をかけてくる。俺の腕を取って脈や血圧を測っているみたいだ。
ドアがまた開く音がする。駆け足でこちらに近づく足音が聞こえた。
「三浦さん…どうですか?」
今度は男の声が近くで聞こえてきた。
俺は必死に目を開けて辺りを見ようとした。何とか目を見開き、焦点を合わせる。まず目に入ったのは医師の白衣の白だった。
ゆっくりと視線を移して行くと、少し離れた所に柚がいた。柚は目を潤ませながら、必死に泣くのを我慢しているようで口に手を当てていた。
「三浦さん…分かりますか?」
医師の問いかけに意識を戻して頷いた。ホッとした表情の医師は、診察をしながら更に話しかけてくる。
「此処が何処だか分かりますか?」
「……びょ…う、いん…」
声を振り絞って答えると医師は笑顔で頷いた。
「そうです。事故で此処に運ばれて来たんですよ?事故の事は覚えていますか?」
事故?俺は事故に遭って怪我をしたのか?考えながら思い出そうとすると頭が割れそうに痛くなった。