ツンデレ社長の甘い求愛
「お疲れさまでした。私は次の電車で帰ります」


無言で立ち去るわけにもいかず頭を下げると、社長は一言「お疲れ」と言葉を残し、満員に近い電車に乗り込んだ。


すぐにドアが閉まり走り出す電車。

それを見送った後、また少しずつ電車を待つ乗客の列ができていく。


悔しい。
なにも言い返せない自分が本当に悔しい。


社長はいつもそうだ。
自分の考えが一番正しいと疑うことなく、ズバズバ言ってくる。


他人が聞いたら社長が正しいと言う声の方が、多いのかもしれない。

けれどみんなそれぞれ事情を抱え、色々な想いを抱きながら毎日生きている。


それを知ろうともしないでいつもいつも……!

会議のときは何を言われたって我慢できるし、聞き流せる。

でも完全に仕事モードオフの状態で言われると、心にズシンときた。


社長のことは仕事の面では尊敬できる部分はある。

けれど、人間性の面では無理。

ひとつも尊敬できないし大嫌い。

どうしてあんな人を女子たちみんな口を揃えて「いい!」って言うのか理解できない。


悔しい思いに涙を滲ませながら、家路に着いた。
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