ツンデレ社長の甘い求愛
彼の視線に次第に居たたまれなくなってしまい、視線を落としてしまう。


これが今の私にできる精一杯だ。

社長のことを上司として尊敬している。そして異性として好き――。


決して言えるはずない気持ちを、精一杯誤魔化して伝えてしまったけれど、思いの外恥ずかしい。


おかしいな、学生時代には何度か告白したことあるのにな。

好きって伝えたわけじゃないのに、どうしてこんなにドギマギしてしまっているのだろうか。


おまけに社長、なにも言わないし。

次第にここがタクシーの車内ということと、運転手さんにも聞かれていたことを思い出してしまい、ますます恥ずかしくなるばかり。


「でっ、ですからあまり落ち込まないでください! 私以外にも社長のこと、本気で尊敬しまくっている社員も必ずいるはずですから!!」


この話はもう終わりにしたくて早口で捲し立てた後、躊躇いがちに大きな手が私の頭を撫でてきた。

――え?


ドキッとしてしまったのと同時に、社長は「サンキュ」と囁いた。


すぐに離れていく大きな手。顔を上げればいつになく優しい顔をして私を見つめる社長と視線がかち合う。

たったそれだけで心臓は大きく跳ねた。
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