好きになるまで待ってなんていられない
「思い出せよ、あんたさ、平然と話して、水飲んでただろ?」
確かに、…何とも思わなかったけど。
はっ…え?その時…どの程度の露出だったの…。
え?て言うか、お風呂からベッド迄は?
ガバッと起き上がった。
「…ねえ、あの…、お風呂から出してくれたって事は、つまり裸のまま運んだって事よね?」
「ああ」
「何も巻かずに?」
「ああ。急いでたし、そのまま抱き上げた。運んで寝かすんだ。何か巻く必要なんか無いだろ」
…つまりは、一度見たモノは、ずっとそのままでいいって事なのね…。
…寝る事、ベッドでは、は、裸が常識なの?
「…ま、あ、今みたいに見えてたって事だ」
え゙?
「キャーッ!!馬鹿」
慌てて布団を掻き寄せた。
「馬鹿ってな…俺のせいじゃないし、今更だろ」
嫌、嫌ー。本当に嫌。見た、見た、絶っ対、見た。見てる!見てる。
見せられないよ…。見られたくも無いよ。
…本気で泣きたい。もう嫌…。悲しすぎる。…私…女性的な事で泣かされてばっかり。泣いてるのは自分の感情だけど。
私の事、助けなきゃいけない状況になっても、人命救助の人にだって、嫌。
そんな事があったら、いいからほっといてくださいって言う。
助けるって言われても死ぬほど抵抗する。きっと。
背中を向けて篭った。…悲しい。
解った現実が悲しい。
本当に涙が出てきた。
…。
あっ。
ビクッとなった。後ろから抱きしめられた。
お願い…嫌、…やめて。何もしないで
辛うじて直接触れる事は無かった。
「心配するな。何もしない。こうしてるの嫌か?」
…。
「大丈夫そうなら、こうしてる。一番いいだろ?見えないし、見ない」
…。
確かに。なんて納得はしても、…さっきも、昨夜ももう見られてる。もっと…色々…見られてる。
…。
肩が震える。解らないようにしようとすればするほど涙が溢れてくる。
ふぅ。
後ろで長く吐き出す息が聞こえた。
「なあ。布団巻いたまま、こっち向け。見ないから」
…。何故。
ギュッとされた。
「見ないからこっち向け」
…。
少しだけ捻るようにしてみた。
ん。…んん。
あ…。
見ない、って言ったんだった。…何もしないって言ったのは一個前だった。
これは…唇に触れられたからといっても怒れないの?
んん、…ん、ん。
「…泣くな。泣くような事じゃない」
頭を胸に押し付けるようにして抱き込まれた。背中に腕を回された。
「はぁ…寝よう。起こすから大丈夫だ。ギリギリになんてしないから。余裕があるように帰すから」
裸を見られた事が泣くような事じゃない?…そんなの、私の気持ちなんて全然解らないんだ。ショックに決まってるでしょ?それを…何でもないみたいに………何だかもうよく解らない。…だけど温かい。
背中を撫でられながら、身体に響く声を聞いた。
涙はこの男の身体が乾かしてくれた。
泣きながら子供のように眠りに落ちていた。