お口にクダサイ~記憶の中のフレグランス~
「お疲れさま。仕事今終わって家についたよ。うん。なんだかんだで23時過ぎちゃった」

「遅くまで大変だね、お疲れさま」
「今から食事ても作ろうと思ってさ。変える前にパンとかかじったけど、さすがに腹ペコだよ。今から作ろうと思ってさ」

そう言い、電話をハンズフリーにして置いたらしい。何やらカチャカチャ聞こえてくる。

「さて。僕は今から何を作ろうとしているでしょうか?音で当ててね」
「お、音??よーし」

【コンコン、パカッ、シャカシャカ】
(卵割ってかき混ぜてる?)

【ジューッ・・・「あっ、やべっ」】
(卵を焼いているのかしら?ヤバイって何だろう?早速焦がした?それとも卵の殻混入した?)

【「しまった、焼きすぎた。カチカチ」】電話から先生の落胆した声が聞こえてくる。

「ねえ?卵焼き?失敗したの?」
「君が前に作ってくれたふわふわのオムレツに挑戦したけど、ふわふわにならずに、固そうだよ。ね、今から迎えに行くから作ってよ。君のオムレツが無償に食べたくなった」

私は電話口で微笑んだ。
「真似ようと思ったの?ふわふわにするにはね、マヨネーズ入れるの。適当だけどね、量は。ふわふわするし、濃厚になって美味しいんだよ」

「マヨネーズかぁ。今切らしてるから君の家に行くまでにコンビニで買うからさ」

「うん。待ってるね。ね、先生?」
「何?」
「大好きだよ・・・ありがとう」
私が寂しくないように、いつも色々な魔法を私にかけてくれる。

「僕もだよ。オムレツも食べたいけど君も食べたいな」
「やだ」照れて、答えに困ると
「オムレツよりそっちを先に食べちゃうかも。て、今から行くね。遅くなるから飛ばしていくから」
「事故らないでね。待ってるから」
電話を切る私。

そして、あの秘密のマンションでこれから知らなかった世界を知ることになる。

知らなかった快感を貴方は私の体に、これから教え込むように、少しずつ刻んでいくのだった。




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