お口にクダサイ~記憶の中のフレグランス~
お口にクダサイ

会えないときはね・・・

秋になり、11月を迎える頃になると先生のタワーマンションの秘密の部屋で過ごす時間が増えてきた。そして、先生は何も私に言わなかったけれど、この頃先生は家を出て、奥さんと別居していたのだ。

先生と過ごせる時間が増えたものの、相変わらず自分に自信のない私は理由なく不安に襲われる事が多かった。

そんな私の不安を取り除こうと、いつも先生は何かしらしてくれていた。例えば長く会えない時もメールが来るのだけど、ある日写真が添えられたメールが届いた事があった。

【これは何でしょう?最初はノーヒントだよ】

写真を見ると一面真っ黒だった。
【ね?間違って送信してない?写真。一面真っ暗で何も見えないよ】

【間違ってないよ。よく見てよね。ただの黒じゃないよ。素材感とかよく見るとわかるはずだよ】

【素材感?何?わからない】と返信すると、【今度は引きぎみに写真を送るね】と再度送信があった。

【ヒントは詠美ちゃんが好きなものが、その黒い色の所にあるよ。黒いものの中に《おさまっている》と言っていいかな?】

徐々に引き気味の写真になり最後までわからなければ、ネタばらし。

【僕の黒の勝負パンツでした!】
パンツ・・・。勝負用って女の子みたあい。笑いしか出てこない。

・・・そうだ。【好きなものがそこにあるよ。中に《おさまってる》って言っていいかな?】って。 

露骨な下ネタに、一人して顔を赤らめる。そんなくだらないやり取りだったけれど、そんな問題を解こうとして、いつか会えない寂しさが吹き飛んでしまったりするのだ。

そして、ある夜、夜遅くに先生からの電話が鳴った。
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