お口にクダサイ~記憶の中のフレグランス~
先生は「仕事着のままでごめんね」と言い、車を走らせる。BGMは何の曲だか忘れたけれど、洋楽だった気がする。

緊張している私に終始「クーラー寒くない?」だの、「イタリアンで良かったかな?」と気遣う様子で私ははい、や、いいえ、位にしか言えなくてはがゆかったのを覚えている。

車は街の喧騒から離れて閑静な住宅街へと入っていった。家に並んで店の灯りが見え、車はそこに入った。外観は普通の家のように見える。

「個室でゆっくり出来る所だよ。静かだしお気に入りなんだ」創作イタリアンと書かれていたその店に入る。

常連客なのか店員とざっくばらんに話す先生。こちらへどうぞ、と通された部屋に先生に続いて入る。

不思議な気持ちで先生の背中を見つめながら、部屋に入った。テーブルが中央に置かれており、個室といってもパーテーションのようなもので区切られていた。

席が2人がけのソファー席で横並びに座る形になっていた。予想だにせず、先生の横に座る。距離が近い。

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