ムーンライト・テンプテーション ~つきあかりに誘われて~ 
お母さんは、そんな私の背中を優しく一撫ですると、「あらそう」と言った。
相変わらずののん気で穏やかなお母さんの口調に、返って私は癒されてる。

「それで最近島野くん―――明里もだけど―――うちに来なかったのねぇ」
「・・ていうか、島野さんをここに連れて来たのは、一度っきりだよね・・。あのときは、この人と結婚するかもって思ってたし、向こうもそんな感じで。だからここ(実家)に来てくれたんだと思うけど。でもあの人、二股かけてた。で、もう一人の彼女と結婚するって」

それを知った1ヶ月ちょっと前は、かなり挫折感を味わったけど、今は全然・・・まるで他人事みたいな感じで事実を述べてる自分がここにいる。
まぁ、私にとっては、ある意味もう他人事なんだけど。

「そうだったの。じゃあ父親は誰なの」
「・・・会社の・・・人だけどもう来週からは来ない。“いまむら”を辞めて、今月末には青森に行っちゃうんだ」
「名前も言わない上にその様子じゃあ、妊娠したこと、その人には言ってないみたいね」
「まだ・・・だよ。私も妊娠してるってハッキリ分かったのは今朝だし。それで今日病院行って確かめてきたから」
「あら。じゃあエコーの写真もらったでしょ?お母さんにも見せてよ」
「・・うん」と私は答えると、バッグから手帳を出して、それに挟んでいたエコーの写真をテーブルに置いた。

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