ムーンライト・テンプテーション ~つきあかりに誘われて~ 
「結婚は?」
「どうかなぁ。結婚する気ないって、前言ってたことあったから」
「でも明里は産むのよね?」
「もちろん!産むよ、私。もし望月さんに反対されても、私は産んで育てるって、もう決めてるから。あの人・・・望月さんね、大工やってて。今度青森に行くのは宮大工になるためなんだ。それってあの人が今一番やってみたいことで。だから・・・だから私、行かないでとは絶対言わない。目を輝かせて嬉しそうに宮大工のことを語ってくれたあの人に、夢を壊すようなこと、言えないよ。たぶんあの人は、私に“ついて来い”とも言わないと思う。それでも私は、絶対産む。産んで・・・育てるよ。だって私・・産みたいもん。望月さんの子でも、あるから」

感極まって、また泣き出した私を、お母さんはそっと抱きしめてくれた。

「そう。それだけハッキリしてるなら産みなさい。お父さんとお母さんも、できる限り助けるから」
「・・・ぁりがと・・」
「おめでとう、明里。お父さんもきっと喜ぶわよぉ。孫の世話ができるって、今から張りきっちゃうんじゃないかしら。由佳里は結婚してから遠くに住んでて、たっちゃんたちとはなかなか会えないから。お母さんも嬉しいわぁ」

孫の誕生を喜んでくれるだけじゃなくて、そういう風に言ってくれたお母さんが、私を産んで育ててくれたことに、この時私は心から感謝した。

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