ムーンライト・テンプテーション ~つきあかりに誘われて~ 
「ええっと、そこに座ってください。あの・・何か飲みますか」
「いや。いらね」と言いながら、望月さんは、さっきまで私が座っていたソファに腰かけた。

この人が座ると、ソファまでもが小さく見える。

緊張が高ぶるせいか、乗り物酔いみたいなムカムカに加えて、体がフラフラしてきた私は、すぐ近くにあったダイニングチェアに座って、望月さんと向かい合った。
まずは心身を落ち着けようと、私が密かに深呼吸をしたとき、珍しく望月さんの方から発言してきた。

「俺もおまえに渡すもんあるんだ」
「え・・」

望月さんはちょっとだけ腰を浮かすと、横に置いていたスーパーのレジ袋を私にくれた。
こういうところに全然こだわりがないというか、相変わらず洒落っ気は全然ないっていうか、ダサくはないんだけど・・とりあえず入ればいい的な考えって、いかにも望月さんらしい。

顔にちょっとだけ笑みを浮かべた私は、スーパーのレジ袋をガサゴソ開けた。
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