ムーンライト・テンプテーション ~つきあかりに誘われて~ 
勢い込んで答えた私に、望月さんは軽く頷くと、ソファから立ち上がった。
そして、その後ろにある本棚―――天井の高さまである―――から、バインダー式のファイルを取り出すと、「結構重いぞ」と言いながら、私の膝にそっと置いてくれた。
「大丈夫です」と私は答えると、綴じられた用紙をパラパラめくり始めた。

そこには、お寺の写真が何枚か貼ってあったり、さっき望月さんが言った青森ヒバのことも書いてある。
他には、「キッチンカウンターの高さは最低90cm」とか、用紙の隅っこに走り書きしてあったり、各部屋のレイアウトがラフに描いてあったり。
瓦の種類や建築用語もたくさん書いてある。

・・・望月さんって、こういう字書くんだ。
この人がゼロから創り上げたこの家の歴史が、ここにギュッと詰まってるんだ。

なんか感動して、胸がじぃんときた私は、全体的に右上がりで、とんがったような感じの文字を、そっと手で撫でた。

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