ムーンライト・テンプテーション ~つきあかりに誘われて~ 
「ここに住み始めたのは9年前からだが、ここまで来るのに5年かかった。最初は家具もロクにそろってなかったしな。家の骨組ん中で寝袋引いて、キャンプみたいな生活してたときもあった」

その頃を思い出したのか。
望月さんは遠くを見るような目をしながら、フッと目を細め、口角をやんわり上げた。

それを見た私の心は、なぜかほんわり温かくなったような気がした。
鳩尾だってキュンと疼いたし。
一瞬だけ、だけど。

「ま、俺一人で住む家だからな、そんなに大きな家はいらねえってことで平屋にした。だが俺自身背が高いってのもあって、天井は高め。圧迫感を感じたくなかったんだ。結果的にその点は寺の建築様式と合致した。それから、寺の雰囲気を再現するなら、囲炉裏の方が雰囲気出ると思ったんだが、実際ここで暮らすとなると、暖炉の方が便利だろうと思ってな」
「なるほど。ウォークスルークローゼットとかも確かに便利ですし、そこは現代的って感じですよね。アイランドキッチンも」

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