ムーンライト・テンプテーション ~つきあかりに誘われて~ 
瞬治さんに問いただす前から、私は彼が浮気していると、もう決めつけている。
望月さんが言ったことを信じてる。
だって、仮に望月さんがウソついても、あの人には何のメリットも、デメリットもないんだし。

それに望月さんは、誰かをわざと傷つけるようなウソをつく人じゃないと思う。
根拠はない・・・ていうか、なんかそういう、悲しみとか哀愁みたいなものを、あの人はずっと抱えてるような気がするから。
それこそ根拠がない論なんだけど。

なんてあれこれ考えているうちに、私は瞬治さんが住むマンションまで来ていた。
ただ今、夜の7時56分。
もう帰ってきてるはずだ。

それでも万が一、瞬治さんがいなかったことを考えて、私は鍵を持ってきていた。
つき合い始めて3ヶ月経った頃、彼から渡された合鍵。
これを使うのは初めてだ。
今までは使う必要がなかったから。
彼の家に行くときは、彼も一緒だったし。

今日は彼がいてもいなくても、鍵を使う。
全てを確かめるために。
もし彼が不在なら、帰ってくるまでそこで待つ。

あぁ、緊張する!

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