ムーンライト・テンプテーション ~つきあかりに誘われて~ 
私は瞬治さんの部屋の前で、一度呼吸を整えると、思いきって鍵を差し込んだ。
が、肝心の鍵が回らない。

あれ?これ、確かにここ(瞬治さんち)の鍵のはず、なのに・・・。
なんで?どうして?

訳が分からなくなった私は、もういいやという感じでボタンを押した。
つい気が急いて、立て続けに3回くらい押してしまったため、「ピンポ~ン」というのん気な音が、しばらく周囲に鳴り響く。

いるのかな、瞬治さん。それともいない?
ドアの向こうはシーンとしてる。
と思ったら、インターホンから「はい?」という彼の声が聞こえてきた。

「あっ、あの。わたし・・」と言い淀んで数秒後。
こげ茶色の玄関のドアが開き、瞬治さんが現れた。

私も見たことがある、ちょっとクタッとした白Tシャツに黒短パンを着ている瞬治さんは、すぐにドアを閉めると、私に咎める視線を向けてきた。

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