ムーンライト・テンプテーション ~つきあかりに誘われて~ 
「ま、建築関係の仕事はするが、ヤツと関わることも会うこともねえだろう」
「・・・望月さん。なんで“いまむら”辞めるんですか」
「クビきられたんだよ」
「えっ?」

私は、思わず隣で寝ている望月さんの顔を見た。

この人、何気にすごく大変なこと言ったのに。
いつもどおりの無表情って・・・。

全然動じてない・・・の?

「俺は“いまむら”に勤めて今年で10年目だ。勤続年数が若い割にトシは取ってる。それに養わなきゃいけねえカミさんも子どももいねえ。ま、年齢的にも人員削減の対象にはうってつけだろ」
「でも!それなら田中さんとか笠さんだっているじゃないですか」
「確かにカズとセイジは俺より勤続年数は少ねえ。だがヤツらは若い。将来“いまむら”工事部の上に立つ者として育てていくべきだ。辞めさせずにな。それに、カズんところはもうすぐ坊が生まれるんだ。余計辞めさせるわけにはいかねえよ」
「そんな・・・」
「ま、会社に勤めてりゃあ、そういうことはままある。それにな、俺はもう次の勤め口を見つけてんだ」
「あ・・県外の建設会社って言ってましたね」
「ああ」
「どこですか」
「青森」
「え」

青森、って・・・!?

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