Open Heart〜密やかに たおやかに〜

バイト先から慌てて、病院にやってきた浩美は、私から母さんの話を聞いて憤慨していた。

「どうして?どうして、うちの母さんは、あんな風なの?!信じられないよぉ」
浩美も私がシュウちゃんと別れた理由を知っている。
お金のことで心配させたくなかったし、隠しておくのは難しいと判断したから一連の出来事を浩美には話していた。

父さんのベッドの横に座り、布団に顔をつけて泣く浩美。

「お姉ちゃんが、どんな気持ちで秀之さんと別れたか……母さんはわからないの?!」

浩美の背中をさすりながら、気持ちは沈んでしまう。

母さんに小切手を渡したままにしておいた私が馬鹿だったんだ。そう後悔していた。

「使ったお金は、仕方ないよ。残りのお金は、母さんから取り戻すから。浩美は、心配しないで」

「お姉ちゃん……お姉ちゃんがかわいそうだよ。ねぇ、私ね…ヒック…考えたんだけど」
浩美が泣きながら、私の腕を掴んだ。

「私、学校辞める。辞めて働くよ。っぐ、だ、だからね、お金を返して…お姉ちゃんは秀之さんと…んぐっ」

「浩美…」
泣く浩美をぎゅっと抱きしめて、背中をさする。
「浩美の気持ちは嬉しいよ。ありがとう。でも、専門学校は辞めないで。母さんから残りのお金を貰えば、当分は大丈夫だから。焦って変なことを考えないで」

「お姉ちゃん…」

その時、ベッドに寝ている父さんが動いた気がして視線をずらした。

「父さん!!」

ベッドの上で父さんが苦しそうに痙攣していた。急いで、ベッドの上にあるナースコールのボタンを押す。
「父さん」
「どうしたの!父さん!」
私と浩美がベッドの上で苦しむ父さんになすすべもなく呼びかける。
父さんの身体に触れ、父さんの痙攣が治ることをひたすら願い続けた。

< 110 / 132 >

この作品をシェア

pagetop