闇喰いに魔法のキス



先ほどとは違う声のトーンで、エンプティはギルに返事をした。

そして、少しの沈黙の後、話し始める。



『どうして、ラルフにトドメを刺さなかったの?

おかげで、僕が部下の始末をする羽目になったじゃないか。』



「…!」



ギルが、ぐっ、と眉間にシワを寄せた。


エンプティは、淡々と言葉を続ける。



『ギルは、僕と同じだと思ってた。“魔法使いを憎む、生粋の闇”。

目的のためなら、人を始末することも厭わない、冷徹ロボットだと思ってたのに…』



エンプティは、そこまで言うと

ぐっ、と声を低くして冷たく言った。



『ギルは、いつからタリズマンの言うことを聞く“犬”に成り下がったの?

魔力を奪うだけ、なんて甘い覚悟で僕に勝つなんて不可能だよ。』







ロディとミラさんは、じっと黙り込んでいる。



誰も声を発せないほど、ギルとエンプティの間にはピリピリした緊張感が漂っている。



その時

険しい顔をしたギルが、ゆっくりと口を開いた。



「確かに、僕は魔法使いが嫌いだ。

自身に流れている魔法使いの血も、忌々しくて仕方がない。」



ギルは、ミラさんとエンプティの間に入るようにして足を止めると

エンプティをまっすぐ見つめながら言い放った。



「だけど、この血の力をルミナを守ることに使えるなら

僕は進んで“犬”にでもなんでも成り下がる」







ギル…。



私が、ぎゅっ、と手のひらを握りしめた

その時


エンプティが不敵な笑みを浮かべて呟いた。



『確かに…“二代目闇喰い”としては、命がけでルミナを守らないと

“初代闇喰い”に顔向け出来ないもんね…?』



「!!」



え…?



私が目を見開くと同時に、ギルの顔がこわばった。



“二代目闇喰い”…?



どくん…!


心臓が鈍く音を立てる。



どういう…こと…?



その時、すっ、とエンプティが私の方を向いた。



その瞬間

金縛りにあったように体が硬直し、彼から目が離せなくなる。


ギルが、全てを察したように、はっ!として呟いた。



「エンプティ、お前まさか、ルミナに…!」



ギルが、ばっ!とエンプティに掴みかかろうとした


次の瞬間


シュル…!と、ギルの体に、ラルフのものとは比べ物にならない強さの漆黒のイバラが巻きついた。



「くっ…!」



そのイバラは、ギルをきつく締め付ける。



「「ギル!」」



ロディとミラさんが彼の名を叫んで、ばっ!と戦闘態勢を取った時

エンプティが、鋭いオーラを二人に向けて言った。



『ギルとルミナ以外の奴は、一歩でも動いた瞬間、消すよ。』


「「…!!」」




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