闇喰いに魔法のキス
私は、はっ!として地面を転がるように
イバラを避ける。
『待て!逃すな!!』
必死に攻撃を避けていくが、黒いイバラは容赦なく私を追い詰める。
一体、何が起こっているの?!
“シンの魔法”って、何…?
その時、シュルリと私の体に黒いイバラが巻きついた。
視界が傾いたと思った、次の瞬間。私はイバラに捕らえられ、黒マントの六人組に取り囲まれていた。
ぞくり、と背筋が震えて、心臓が危険を感じてドクドクと低い音をたてる。
『さぁ、もう観念しな。“シン”をどこに隠した?』
「し、知らないわ…!“シン”って、何なの…?お父さんの遺した魔法って…?」
私が震える声でそう言うと、茶髪の男性はギロリと私を睨んで答えた。
『とぼけるつもりか…!ラドリーが、娘のお前に“最強の闇の魔法”を遺したってことはわかってるんだぞ!』
最強の闇の魔法…?
そんなはずはない…!
私はただの人間で、魔法を受け継ぐ力はない。
それに…いくら実力のある魔法使いだからって、お父さんは闇の魔法は絶対使わない。
闇の魔法はお母さんを奪った……
私とお父さんが最も憎むものなんだから…!
その時、私を取り囲む黒マントの一人が茶髪の男性に向かって口を開いた。
『リオネロ様、どうしますか?この娘からは何の魔力も感じませんが…』
どうやら、リオネロと呼ばれた茶髪の男性が、この黒マント達のボスのようだ。
ボスはまじまじと私を眺め、腕組みをしながら答えた。
『魔力はなくとも、この娘はこの世で唯一ラドリーの残した“シン”と繋がる存在だ。知らないフリをして、シンを隠そうとしているに決まってる。』
本当に私は知らないのに……!
必死で体に巻きつくイバラから抜け出そうとするが、身動きすら取れない。
どうすればいいの……?!