闇喰いに魔法のキス


私は、はっ!として地面を転がるように
イバラを避ける。


『待て!逃すな!!』


必死に攻撃を避けていくが、黒いイバラは容赦なく私を追い詰める。


一体、何が起こっているの?!

“シンの魔法”って、何…?


その時、シュルリと私の体に黒いイバラが巻きついた。


視界が傾いたと思った、次の瞬間。私はイバラに捕らえられ、黒マントの六人組に取り囲まれていた。


ぞくり、と背筋が震えて、心臓が危険を感じてドクドクと低い音をたてる。


『さぁ、もう観念しな。“シン”をどこに隠した?』

「し、知らないわ…!“シン”って、何なの…?お父さんの遺した魔法って…?」



私が震える声でそう言うと、茶髪の男性はギロリと私を睨んで答えた。


『とぼけるつもりか…!ラドリーが、娘のお前に“最強の闇の魔法”を遺したってことはわかってるんだぞ!』


最強の闇の魔法…?

そんなはずはない…!


私はただの人間で、魔法を受け継ぐ力はない。


それに…いくら実力のある魔法使いだからって、お父さんは闇の魔法は絶対使わない。


闇の魔法はお母さんを奪った……

私とお父さんが最も憎むものなんだから…!


その時、私を取り囲む黒マントの一人が茶髪の男性に向かって口を開いた。


『リオネロ様、どうしますか?この娘からは何の魔力も感じませんが…』


どうやら、リオネロと呼ばれた茶髪の男性が、この黒マント達のボスのようだ。

ボスはまじまじと私を眺め、腕組みをしながら答えた。


『魔力はなくとも、この娘はこの世で唯一ラドリーの残した“シン”と繋がる存在だ。知らないフリをして、シンを隠そうとしているに決まってる。』


本当に私は知らないのに……!


必死で体に巻きつくイバラから抜け出そうとするが、身動きすら取れない。


どうすればいいの……?!


< 4 / 259 >

この作品をシェア

pagetop