闇喰いに魔法のキス




反射的に私とギルは、ばっ!と離れて

声の聞こえた方を見る。


すると、そこには黒いマントを風になびかせて宙に浮く、茶髪の男性の姿があった。



「リオネロ……!?」



私が目を見開いて彼の名を口にすると

リオネロは妖しげな笑みを浮かべて静かに話しだす。



『まさか、ルミナの中にシンが眠っていて、ギルと“そういう関係”だったなんてね。』



…!

さっきの話を聞かれてたんだ!



そ、それより、“そういう関係”って?!

リオネロ、何か勘違いしてる?!



私が動揺していると、ギルが空中のリオネロをぎろり、と睨んで口を開いた。



「…本当にいいとこだったのに…。

次は気を利かせて、もう少し出てくるタイミングを遅らせてくれよ。」



「ぎ、ギル!そんなこと言ってる場合じゃないでしょ…!」



どこに不機嫌になってるの!

今ピンチなんだよ、私たち!!



ギルは、私を背中に庇うように前へ出ると、リオネロに向かって尋ねた。



「他の魔力を感じない…お前一人なのか?」


『あぁ。ギルにやられた奴以外は、全員タリズマンに魔力を奪われた。』



…!


私は、その言葉に体に緊張が走った。



タリズマンは、闇の命を奪うのではなく

闇の魔力を奪うことで国の治安を維持している。



…リオネロだけ、タリズマンから逃げてきたということ…?



私がごくり、と喉を鳴らした時

リオネロはパァッ!と瞳を輝かせて魔力を放出させる。



『さぁ、シンを渡してもらおうか。

…今さら逃げようったって、そうはいかないよ。』



…!

今までの闇たちより数倍強い魔力。


さすがに、ダウトの幹部なだけある…!



しかし、ギルはかすかな笑みを浮かべ

私の方をちらり、と見て言った。



「下がってて、すぐに終わらせるから。

…後でさっきの続きしようね。」



えっ!!



かぁっ!と頬が赤く染まる。



…もう、ギルってば!

そんなに余裕そうにしてて大丈夫なの…?!



すると、リオネロが、ばっ!とギルに向かって腕を突き出した。



『…今にそんな余裕無くさせてやる…!

覚悟しろ、闇喰いギル!!』


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