それどころか、手を繋ぐ以上の関係を求めている自分に気づいた。

恋愛経験はないから、どうすればいいのかわからない。

彼の瞳からそらしたいのに、この手を離したいのに、それに対してどう対応すればいいのかわからない。

「――もう少しだけ…」

呟くようにそこまで言うと、あたしはようやく朝比奈さんから目をそらした。

「――せめて、契約期間の終了まで考えさせてもらえませんか?

ちゃんと考えて、ちゃんと答えを出します」

そう言ったあたしに、
「そっか…」

朝比奈さんは呟くように返事をした。

ああ、何でだろう?

何で気づいてしまったのだろう?

でも、これが現実だ。

わかってしまった以上、この事実を認めないといけないのだ。

隠していたって、事実は追いかけてくるのだ。
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