箱庭センチメンタル




程なくして、真也が声を上げる。


「あ、あれあれ」


見えてきた、指差す先を見上げる。


遠目からもそうだったけれど、近づくにつれ高級感を感じさせるマンションだ。


エレベーターに乗った彼は、迷わず8階のボタンを押した。



「ん、先入って」



到着した玄関。


妙な緊張が走りつつも促されるまま、そろりと足を踏み入れる。



シミひとつない白い壁は清潔感があって、靴箱の上には埃すら見受けられない。


まだ玄関に立っただけなのだけれど、普段から綺麗にしていることが分かる。



突き当たりの扉を開けた先は、明るいリビングだった。



革張りの茶色いソファ、壁掛けの大きなテレビの両脇に設置された本棚。


淡いライトグリーンのカーテンが掛かるベランダ向きの窓辺には、深緑の観葉植物が控えめに存在を主張している。


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