箱庭センチメンタル
白を背景に、全体的にさっぱりとした小綺麗な印象を受けた。
和を基調とした菊ノ宮の屋敷とは、全く異なる景色。
物珍しさゆえか、繁々と眺めて見てしまう。
そうして物言わず視線をあちらこちらへ動かす私に、真也は少し戸惑うように頬をかく。
「自分で言うのもなんだけど、何もないんだよ。びっくりするくらい殺風景だろ」
少々苦笑い気味の彼に、首を振ってみせる。
「そんなことはありません。私が言うのもおこがましいのですが、とても良い部屋だと思います」
嘘偽りのない本心だった。
どこか身軽で、心穏やかになるような。
そんな気分だった。
何故だろうか。
初めてきた場所だと言うのに、居心地が良いのだ。
「ニャァ」
小さな猫の鳴き声。
カーテンが揺れ、裏から見覚えのある黒い子猫が顔を出した。
小さな足で寄ってくると、頭を擦り付けてくる。