箱庭センチメンタル
「貴方の…?」
「いや、多分野良じゃないかな。
つまりさ、こいつを助けようと思って塀に登ったら、そのまま足滑らせて転落。すぐ出て行けばよかったんだろうけど、頭打って意識はっきりしなくてさ。見つかったらもう後の祭り。気付いたら大事になってるわ、マジでビビった」
ヘラヘラと事も無げに笑って説明する彼には悪いけれど、本気で同情してしまった。
「な、お前もびっくりしたよなー?」
猫と戯れて、まるで危機感がない彼をしげしげと眺める。
女中が訪ねてきた時も、言ってしまえば彼が現れてから、ずっと疑問が私の中でくすぶっている。
何故、私は彼を匿い、あまつさえ招き入れてしまっているのだろうか。
彼が侵入者だというのは早期で気付いていた。
見慣れない風貌、同年の異性、屋敷であるまじき行動の数々。
むしろ気付かない方がおかしい。