箱庭センチメンタル
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ことり、という微かな物音がした。
眠ってしまっていたようだけれど、せいぜい30分程度か。
それほど時間は経っていないように思う。
どこに目を向けても広がる、暗闇。
けれど、顔の高さまで手を持ってくれば、影のようなものがそこにあると、何となく認知できる程には慣れた。
とはいえ、限界というものは当然ある。
到底身動きのできる状態ではないことは確かだ。
僅かに体勢を変えて、長時間地面に接していた箇所の麻痺を逃がしてほぐす。
凝り固まった足先を丁寧に揉みながら、唐突に覚醒した原因を探ってみた。
ここには、私以外に人はいない。
物という雑多なものは一切存在せず、あるのは閉鎖的な空間のみ。
外の物音さえも遮断するこの場で、唯一の外部音といえば、蔵の扉に他ならない。
食事の時間かとも思ったけれど、空腹は感じておらず、それも違うとすぐに思い至る。