箱庭センチメンタル
では、何だと言うのだろう。
小さく首を傾げたところで、突如として影が入る。
いや、あり得ない。
この暗闇で目視できるものはないし、そもそも影などできるわけがない。
答えはすぐさま見つかった。
状況判断が即座にできるあたり、私は至って正常らしい。
ここ数日、まともに開かれることのなかった扉が開いたのだ。
すき間から覗く月明かりが、今が夜であることを暗示させる。
ぼんやり、何の気なしに月を眺めていると、扉の後ろから人影が覗いた。
逆光でシルエットしか伺えないけれど、お祖母様でも使用人でもないようだ。
入ろうか入るまいか、そわそわと落ち着かない、迷いのある様子から分かった。
となれば、自ずと人物は限られる。
何通りかの予測を立て、その中で一番可能性が高いのは……