箱庭センチメンタル



では、何だと言うのだろう。


小さく首を傾げたところで、突如として影が入る。



いや、あり得ない。


この暗闇で目視できるものはないし、そもそも影などできるわけがない。



答えはすぐさま見つかった。


状況判断が即座にできるあたり、私は至って正常らしい。




ここ数日、まともに開かれることのなかった扉が開いたのだ。


すき間から覗く月明かりが、今が夜であることを暗示させる。



ぼんやり、何の気なしに月を眺めていると、扉の後ろから人影が覗いた。


逆光でシルエットしか伺えないけれど、お祖母様でも使用人でもないようだ。


入ろうか入るまいか、そわそわと落ち着かない、迷いのある様子から分かった。



となれば、自ずと人物は限られる。


何通りかの予測を立て、その中で一番可能性が高いのは……



< 64 / 134 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop