箱庭センチメンタル



「うまく抜け出しましたね、皐。知れれば大事ですよ」


あくまでやんわりと、声をかければ案の定、影の人物はびくりと体を揺らした。



「お、お姉様……あの、どうして皐だとお分かりに……」


怒られて怯えた子犬のように、今にも隠れてしまいそうな妹は、小鳥のさえずるような高く可愛らしい声で私に問いかける。



「さて、何故でしょうね」


元来まっすぐな皐に正面から答えていては、本人も知らぬ間にこちらが乗せられ、ほだされてしまいそうだ。


そうした思惑から、さらり、かわして本題に移る。


「このような場に貴方が足を踏み入れるとは、嘆かわしいことです。何をしに来たのですか」


「……お姉様のご様子を見にきたんです。
あの……ご迷惑、でしたか…?」


「……」



困ってしまった。




よく言えば正直、悪く言えば向こう見ず、又は無鉄砲。


一切の邪念とは無縁の存在であり、詰まる所、私とは対照の立場にある妹。


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