箱庭センチメンタル
身の回りの簡単な雑事程度なら、役に立てるかもしれない。
そんな思惑を抱える私を、彼はじっと見る。
喉がこくりと動き、心なしか頰も紅潮しているように見える。
「あの、お加減が優れないのですか?」
「…えっ?あ、やっ、何でもないって!
えと、何つーか、その…な?よ、よこしまな考えが…」
「…?」
「うっ。っと、とにかく!行くか!」
彼は一つ咳払いをすると、振り切るように再び歩き出す。
その歩調はやや速く、着物の裾に足を取られそうになりながら足早について行く。
そうしていると、やがて向こう脛のあたりが痺れてきた。
無理が祟る前に、面倒をかけないためにも歩みを緩めて欲しいと素直に頼むのが最善だろう。
「あの、お待ちください。桜木様」
声かけをした、一息の後。
ごんっ、と鈍い音が聞こえて、しゃがみ込んだ彼に慌てて駆け寄る。