箱庭センチメンタル



突然のことで把握しきれなかったけれど、どうやら彼は電柱に顔面から衝突してしまったらしい。



「お怪我はございませんか?やはりお加減が優れないのでは…」


言いながら、彼の前髪をかき上げ、赤くなっている額の様子を伺う。


大した傷ではないようでほっとした。


安堵の息を漏らした瞬間、しゃがんだままだった彼が勢い良く後ろに下がり、反動で尻餅をつく。


上目にこちらを見上げる顔が、上気したように赤くなっている。


ぶつけたのは額だけだと思っていたのだけれど…。



「っへ、へーき!大丈夫、だから…!!」


……とても大丈夫そうには見えない。


訝しむ私に気づく様子もなく、思い出したように彼は声をあげる。


「あ、名前!てか、え、なに、様ぁ!?」


「…?目上の方に敬称をつけるのは常識なのでは?」



私はそう教えられてきた。


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