箱庭センチメンタル



事実、お祖母様や両親、遠い親族に至るまで敬称を忘れたことはない。


例外で言うなれば、年の離れた妹の皐くらいだろうか。



「や、間違ってはない……っと、思うけどなんかズレてるぞ!!」


「何か問題がございましたか?」


「大アリ!
俺別に目上じゃないし、それだと距離置かれてる気がしてなんか嫌だし、てか同い年なんだからさ、普通に接してくれよ!」



必死な様子の彼を見ていると、自分が悪い事をしてしまったようで後ろめたくなる。


まるで本当に常識はずれだと、確かにその通りだけれど言われているようだ。


それにしても……



私は彼に名前どころか歳まで明かしていただろうか。


ふと疑問を口にしかけて、閉ざす。



不躾だと諌めたばかりではないか。


私が覚えていないだけかもしれない、野暮なことは言うまいと無理やり押し込んだ。


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