箱庭センチメンタル



それらの感情は潜んでいるだけだ。


そう思えてしまうのは、やはりその人柄ゆえなのだと感じざるを得ない。



「私は好きですよ」



髪の乱れた様を見て、ごく自然と手を伸ばす。


けれど、また逸らされるかと考え、躊躇いが生じる。


空中で迷い止まった私の手は、幾分大きな別の手に引き寄せられた。



「あの…?」


「雛李が……なんだって?」


驚くほど穏やかな声色に、胸の奥で何かが疼いた。


彼の視線が、熱い。



「私、は……」


「うん」



私を見ている。


そう思うだけで込み上げてくる、この言いようのない感覚はなんだろうか。


「私は、好きです。貴方の髪が、とても」



感染ったのだろうか、疼いた箇所が熱を帯びたような気がする。


口内がカラカラに渇き、気がはやる。


こんなことは初めてだ。


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