S系御曹司と政略結婚!?


行き先も知らぬまま到着した先は、都内の一等地に建つ料亭だった。しかも、有川の家が贔屓にしているお店だ。

ここに来た理由って何だろう?疑問符が取り巻く私は、車内から出ようとするヤツに声を掛けた。

理由も知らずに行くのは気が退けるので嫌味オトコに尋ねようとしたのに、肩越しに振り返った男の視線が突き刺さる。

「行けば分かる。さっさと出ろ」

「え、でも、」
「早くしろ」

釈然としないでいる私にまたひと睨みし、車から早く出るよう促してきた。

尋ねる終わる前に口を挟むな……!言えない文句がまた増え、無駄なストレスを抱えただけに終わってしまう。

都内の喧噪とは無縁の歴史ある佇まいに足を踏み入れてすぐ、馴染みの美人女将に出迎えられる。

「華澄お嬢様、本日はお越し下さいまして誠にありがとうございます。ささ、お待ちですのでどうぞ」

年季も入った厳かなお店からは威厳すら感じる。それも女将の温かい笑顔で緩和されるので私はここが大好きだ。

“S”人間の神野に打ちひしがれた後とあれば、余計に神々しくすら感じてしまう。


「ありがとうございます。本日はよろしくお願いします」

「まあ、ご丁寧にありがとうございます」

笑顔で挨拶を交わしてから中に入ると、目的の部屋まで女将に案内を受けた。


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