S系御曹司と政略結婚!?
ふぅ、と息を吐きながらそんなことを考えていると少しは気も晴れ、デスク上の書類に視線を落としていた。
「オイ、メシの時間だ」
「えっ、もう!?」
低い声が隣のデスクから聞こえ、勢いよく顔を上げた私はそのまま室内の時計を見た。神野さんの言うとおり、お昼休憩にさしかかっている。
ちなみに財務諸表の見方を勉強していたのだが、マンツーマンゆえに息つく暇も与えて貰えない。
そのため、休憩は砂漠をさまよった末にやっとの思いで見つけた“オアシス”に。しかも大好きな食事の時間とあれば、自然と頬も緩んでしまう。
デスク上をあらかた片し、いそいそとバッグを持つと立ち上がって彼に声を掛けた。
「社食に行ってきまーす!」と。
いつものように報告して魔窟から逃げ出すはず、だった。
「誰が食事に行って良いと許可した?これから出掛けるんだよ」
「えっ、聞いてな」
「言ってねぇし。おまえの意志はどうでもいい、早く支度しろ」
神野さんは素早く黒のジャケットを羽織りながら、立ち尽くす私を急かすよう睨んでくる。
「……はい」
「準備が出来たらさっさと歩け。無能な上に鈍足か?」
ぐずぐずランチバッグからビジネスバッグに持ち替えているのがお気に召さなかったらしい。
まるで良いとこナシと言いたいんですね?いや、もうお腹が減って否定も肯定もする気力がないわ。
「いま行きます」
小さく溜め息を吐いた私は急ぎ足で、すでに部屋を出ていた神野さんのあとを追いかけた。